ロボット娘(その8)

翌日、朝から美和さんが、個室セルAIを通して、アバターロボットを慎重に動かしている。

「このロボットで、動作のろいのね。」
「仕方が無いでしょう。速くして怪我をさせたくないし。」
「おっとりしていて、見ていてイライラしてくるね。」
「怪我をさせるよりましでしょう。」
と話していると、おばあちゃんの視界の端、部屋の壁に黒いものが動くのが目に入った。

「あっ!ゴキブリ。美和、そこの殺虫剤取って!」
「えl」と言って、モニターの隅のテレビの上の殺虫スプレーに手を伸ばす。のろい。
『フリーモード』と美和さんがつぶやくと、いきなり手の動作が早くなった。
しかし、慣れていないので、落としてしまう。掴む、落とす、掴む、落とす、
コロコロと殺虫スプレーは転がっていく!

「早く、早く、早く」とおばあちゃんがせかす、
そこに晴代がやってきたが、ゴキブリを見て凍り付く。

ついに掴んだが、バランスを崩してロボットがこけた。
ゴキブリ逃走完了!

「ママ、こっちに来て退治した方が良かったんじゃない?」と晴代ちゃんが言うのを、こけたロボットを通して美和さんは聞いた。

(光へ向けての「ロボット娘(その9)」に続く)

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