次の日、晴代ちゃんは、楽しくて仕方なかった。
実家の居間、その隣の部屋の実家AI、そして個室セルAIを積んでいるトラック、その間を飛び回っていた。
居間には、アバターロボットがちょこんとすわっている。全身はパステルイエロー、女性を想わせる柔らかなカーブを基調としている。
調度人間が正座しているようであったが、腕は太くて長い。腰の当たりにはベルトのようなものが付いている。
美和さんが、アバターロボットにコンピューターをつないで腕の動作を確認していた。
「ねぇねぇ ママ、何故このロボット座っているの?」
「ロボットが転倒しにくいようにというのと、お風呂なんか連れていくのに、ロボットの膝の上に座ってもらうためよ」
「ねぇねぇ、ママ、何故このロボットの上は太くて長いの?」
「太くないと、人を抱きかかえた時に、ロボットの手に当たって痛いからよ、そして腕が長くないと、遠くのものをつかめないでしょう。」
「ロボットは、人間みたいに、ベッドの上に乗っかって、片膝立ちで作業できないから、その分腕が長いのよ」
ロボットの顔の部分は黒いモニターとなっていて、操作者の顔を映し出し、また、全身に、小型カメラが配置されて、アバターロボットの家具への衝突回避に役立つようになっていた。
晴代ちゃんは、隣の部屋に行って、実家AIのモニター画面をのぞき込んでる研究員に
「何故、そんなにモニター画面があるの?」
「ああ、これは、このモニター画面の画像から実家AIがアバターロボットの姿勢や位置の情報を読み取って、アバターロボットの行動を調整するからなんだよ」
「そのためには、色々な角度からの映像が必要になるんだ」
「だから、あの柱のところや、タンスの上にカメラがあるのね」
「それにアバターロボットには、マークがついていて、その位置や見え方から、アバターロボットの位置や動作状況を、この実家AIが把握して、操作者を手助けするんだ」
「もっとも、『フリーモード』にすれば、何ら制限なく、動かせるけど、かなり習熟が必要だろうね」
「フーン、つまり、普通は補助輪つき自転車みたいなものなんだ」