ロボット娘(その8)
翌日、朝から美和さんが、個室セルAIを通して、アバターロボットを慎重に動かしている。 「このロボットで、動作のろいのね。」 「仕方が無いでしょう。速くして怪我をさせたくないし。」 「おっとりしていて、見ていてイライラしてくるね。」 「怪我をさせるよりましでしょう。」 と話していると、おばあちゃんの視界の端、部屋の壁に黒いものが動くのが目に入った。 「あっ!ゴキブリ。美和、そこの殺虫剤取って!」 「 […]
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翌日、朝から美和さんが、個室セルAIを通して、アバターロボットを慎重に動かしている。 「このロボットで、動作のろいのね。」 「仕方が無いでしょう。速くして怪我をさせたくないし。」 「おっとりしていて、見ていてイライラしてくるね。」 「怪我をさせるよりましでしょう。」 と話していると、おばあちゃんの視界の端、部屋の壁に黒いものが動くのが目に入った。 「あっ!ゴキブリ。美和、そこの殺虫剤取って!」 「 […]
家に入る前に、個室セルAIが積んであるトラックによると、ちょうど研究員が、専用シートに座って、動かしていた。 マイクで美和さんと会話しながら、大画面を見て、手足を動かしている。 「ねっ、簡単そうでしょう。顔と手しか動かしてなくて、移動の時は足でアクセルとブレーキ、そして方向は顔の向きで」 『フリーモード』と研究員が声を発した。ゆっくりと慎重に手を動かしていたかと思うと、急い早く動かしている。 さら […]
居間に戻ると、「晴代ちゃん、おばあちゃんが、買い物に行きたいんだって。一緒に行って来てくれない?」 「えーっ、私ここに居たいのに」 「お願いだから、後でこのロボットの中見せてあげるから。ねっお願い!」 「絶対よ。絶対見せてね!」 「分かったわよ、さぁいってらっしゃい。」と言って、出かけたおばあちゃんと晴代ちゃん。 買い物を終えて帰る道すがら、おばあちゃんがポロリと言った。 「ロボットに介護される未 […]
次の日、晴代ちゃんは、楽しくて仕方なかった。 実家の居間、その隣の部屋の実家AI、そして個室セルAIを積んでいるトラック、その間を飛び回っていた。 居間には、アバターロボットがちょこんとすわっている。全身はパステルイエロー、女性を想わせる柔らかなカーブを基調としている。 調度人間が正座しているようであったが、腕は太くて長い。腰の当たりにはベルトのようなものが付いている。 美和さんが、アバターロボッ […]
無事、正月の肩もみテストを合格した美和さん。 アバターロボット、実家AI、個室セルAI、操作者用の装着具、そして、各種計測システムの点検も終わり、実家に送り出したので、 今は、自宅の食卓でゆっくりくつろいでいた。 そこに晴代ちゃんがやってくると、ちょこんと座った。 「ママは明日から、東京でしょう?」 「そうよ。明日は東京の実家。アバターロボットの調整のお仕事でね」 「ねえ、ママはなぜアバターロボッ […]
「うーん。さすがお母様。」 食卓につっぷして、美和さんはつぶやいた。 「お母さんどうだった。」夫の一弘が問うと、 「多分、アバターロボットのモニターにはなってくれると思うけど、正月私だけでも、帰らないと」 「何か、条件をつけられたんだね」 「ええ、そうよ。私が、正月にお母さんの肩を上手に揉めたらOKだって。」 「じゃ、今度の正月は、家族3人で、実家に帰ることにしようか。仕事の段取りも、そういう風に […]
「一週間で10万円?」 「そうよ、それだけ年をとった方の意見は重要なのよ。嘘じゃないわよ。」とまた、唇の左ハシが少し上がる。 いけない。いけない。これは罠だ。罠に決まっている! しかし、10万円ということに対し、嘘も言っていない。これは娘だから断言できる。 「ねぇ、お母様は、いつもお父様に肩を揉んでもらって、いつも上手だと言ってたから、そんな風に揉めたら良い製品になると思うの」 「それに、私は大阪 […]
「美和さんが来ました。美和さんが来ました」というロボットの声を聞いた武子さん。 娘から、アバターロボットを実家に置きたいのと言う話があった日のことを思いだし、 チラリと緊急停止ボタンのついたリモコンを見た。 元々、機械好きであった娘であるが、まさか、あんな提案をしてくるなんて! あんな提案とは・・・ 「お母様、開発中のアバターロボットのモニターをしてくれない?」 そう言った後、娘の唇の左ハシが、少 […]